
自社の製品・サービスのプロモーションや採用活動で自社の魅力を伝える際に、他社との差別化や自社の優位性など、伝えたいことが多くなってしまいがちです。
それは決して悪いことではありません。しかしながら、内容が多すぎて、結局何が言いたかったのか記憶に残らないということが起こってしまう恐れがあります。
動画制作においても、残念ながらそれは起こってしまいます。
だからといって、すべての動画の内容を、簡潔に短く編集する必要もないのです。
ターゲットユーザーに、しっかりと伝えて理解してもらうためには、どのフェーズでどこの媒体でどのような動画を見せるのがいいのかを戦略的に設計しなければならないのです。
「自社のプロモーション用に動画を作りたいが、最適な長さがわからない…」
「動画の長さが再生回数やコンバージョンにどう影響するのか知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方も多いはずです。動画マーケティングの重要性が高まる中、「動画の長さ」は成果を左右する重要な要素です。
本記事では、「動画の長さ」をテーマとして、ビジネスの成果に繋げるための戦略を徹底的に解説します。動画の長さが、現在どのような傾向なのかを探りながら、長尺と短尺のメリット・デメリットや動画戦略から逆算した最適な長さなど、動画制作を成功に導くヒントが多くありますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.最適な動画の長さは何分?

結論からいうと、一番見てもらいやすい動画の長さを、何秒または何分と言うことはできません。
動画の長さが短い短尺動画と、動画の長さが長い長尺動画は、それぞれ一長一短があるため、一概にこの長さが最適です、とは言えないのです。
また、動画の長さは、視聴者のエンゲージメント(視聴維持率や反応)に直接影響します。そして、このエンゲージメントは、動画プラットフォームが「ユーザーにとって価値のあるコンテンツか」を判断するための重要な指標(シグナル)となります。つまり、ターゲットユーザーが「最後まで見たい」と思える適切な長さの動画を制作することが必要になってきます。
最近の動画の長さの傾向

動画のプラットフォームで最も代表的な例として「YouTube」が挙げられますが、日本語版のサービス開始した2007年からは大きく変貌を遂げています。
サービス開始の初期の頃は、短尺動画が主流でしたが、2010年以降はエンタメ系のコンテンツやハウツー動画などで長尺の動画が多くつくられる傾向がありました。
しかし近年は、スマホの普及や情報過多により、若年層を中心に「タイパ」を求める人が増えてきました。そのため、動画の長さも1分以内の動画が人気であったり、動画を早送り再生する倍速視聴を行っている視聴者が増えてきています。
このような状況からYouTubeをはじめとして、TikTokやインスタグラム、その他プラットフォームでも短尺の動画サービスを開始しています。
さらに読む:ショート動画(縦型短尺動画)の魅力とは?
2.短尺動画と長尺動画を徹底比較

動画の長さは短尺動画と長尺動画に大きく分けられます。それぞれの特性を理解し、目的によって使い分けることが重要です。
視聴者の集中力や視聴環境など様々な要因によって、動画の長さはどのぐらいが適切なのかが変わってくるのです。
ここでは短尺と長尺のメリット・デメリット、活用例など比較をしてみましたので御覧ください。
短尺動画 | 長尺動画 | |
---|---|---|
目安の長さ | 15秒〜3分程度 | 10分〜数時間 |
主な媒体 | YouTubeショート、Instagram Reels、TikTok、Web動画広告 | YouTube、Webサイト、ウェビナーなど |
メリット | ・視聴ハードルが低く、気軽に再生されやすい ・スキマ時間に見てもらえる ・拡散力が高く、認知拡大に繋がりやすい ・制作コストや時間を比較的抑えられる | ・多くの情報を盛り込み、深い理解を促進できる ・専門性や権威性を示し、信頼を構築しやすい ・総再生時間が長くなりやすく、YouTube SEOで有利 ・見込み客の育成に効果的 |
デメリット | ・伝えられる情報量が限られる ・複雑な商材やサービスの説明には不向き ・深いエンゲージメントや信頼構築には繋がりにくい | ・視聴者の集中力を維持するのが難しい ・制作コストや時間がかかる ・「見るのに気合がいる」と敬遠される可能性 |
BtoB活用例 | ・製品のティザー予告 ・イベントやセミナーの告知 ・企業の裏側やカルチャー紹介 ・サービスのワンポイント解説 | ・製品・サービスの詳細なデモンストレーション ・導入事例やお客様インタビュー、ウェビナー、オンラインセミナー ・業界の専門家との対談や解説動画 |
3.【購買プロセス別】消費者の行動から動画の長さを決める

認知から購入やシェアまで消費者の心理的・行動的なプロセスごとに動画の長さを考えていくことができます。
ここでは購買プロセスのフレームワークを使って適切な動画の長さを紹介します。
購買プロセス | 目的 | 最適な長さの目安 | 内容 |
---|---|---|---|
認知 | 製品について知られていない潜在顧客に広く知らせる。 | 短尺動画 (6秒〜1分) | ・気軽に見てもらえる縦型動画で、まずは多くの人に情報を届ける戦略が有効 ・SNS(YouTubeショート、TikTok等)で目を引く、課題提起型の短い広告動画 ・Heroコンテンツを意識したストーリー |
関心 | 認知した顧客に自分事として興味を持ってもらう。 | 短尺動画 (15秒〜3分) | ・課題を解決するサービスの概要を簡潔に紹介する「サービス紹介動画」 ・Hubコンテンツを意識したストーリー ・業界のトレンドやお役立ち情報を紹介するミニセミナー動画 |
比較検討 | 他社と比較し、自社の優位性や独自性などを理解してもらう。 | 長尺動画 (3分以上) | ・導入企業の担当者が成果を語る顧客導入事例 ・インタビュー動画 ・製品やサービスの詳細なデモンストレーション動画 |
行動 | 不安を解消し、具体的な問い合わせや購入をしてもらう。 | 短尺動画 (1分〜3分) | ・「よくある質問」に回答するQ&A動画(FAQ動画) ・担当者の顔が見えるメッセージ動画で安心感を与えます。 ・Helpコンテンツを意識したストーリー |
共有 | 顧客満足度を高めファンになってもらう。 | 短尺・長尺動画(15秒以上) | ・ユーザーコミュニティ限定の特別セミナー動画など、ロイヤリティを高めるコンテンツ ・イベントのダイジェスト動画やインフルエンサーなどを活用したレビュー動画など |
さらに読む:Heroコンテンツ、Hubコンテンツ、Helpコンテンツとは?
4.【媒体別】投稿の種類と最適な動画の長さ

動画配信プラットフォームや自社サイトなど、今では動画を配信する場所は数多くありますが、それぞれの配信場所によって、最適な動画の長さが決まってきます。
ここでは企業がよく利用する代表的な動画配信プラットフォームの特徴をご紹介します。
YouTube
YouTubeには、大きく分けて通常の投稿とYouTubeショートがありますが、SNSの中でもYouTubeは、より深い内容を扱う長尺動画も需要があるのが特徴といえるでしょう。
YouTubeは、「総再生時間」がSEOにおいて極めて重要な指標です。アルゴリズムは、視聴者が長く滞在するチャンネルや動画を「価値が高い」と判断し、検索結果や関連動画で優遇します。
すなわち、短尺や長尺という動画の長さというより、まずは、視聴者が最後まで見てもらえるような動画の内容が必要と言えるでしょう。
それぞれ目的や動画の長さは以下のように違ってきます。
種類 | 最適な長さの目安 | 目的 | 内容 |
---|---|---|---|
YouTubeショート | 60秒以内 (最大3分※条件あり) | 新規ファンの獲得、 チャンネルへの誘導 | 長尺動画の切り抜き、ティザーなど。まずはショートで興味を持ってもらい、本編の長尺動画へ誘導する流れが効果的です。 |
通常の投稿 | 3分以上 | SEOによる検索流入、専門性の提示、見込み客の育成 | 「〇〇 導入方法」「〇〇 比較」といった検索キーワードを意識した解説動画や、会社紹介動画、ウェビナーのアーカイブなど。 |
さらに読む:YouTubeショートのメリットとは?
サービス開始当初は画像の投稿のみに限られていましたが、現在は、動画再生の環境が整い、動画を楽しむユーザーも多く存在しています。
インスタグラムの特徴としては、若い世代の利用者の割合が多く、スワイプしながら、新しいものを発見をしていくという行動をする傾向があります。そのため、動画の長さは短くインパクトのある動画が中心となります。
インスタグラムの動画投稿の種類としては、フィード投稿、リール動画、ストーリーズ動画があり、ここでは、リール動画とフィード動画を比べてみます。
種類 | 最適な長さの目安 | 目的 | 内容 |
---|---|---|---|
リール動画 | 15秒〜30秒(最大3分) | トレンドに乗った認知拡大、ブランディング | オフィスツアー、社員紹介、製品のスタイリッシュな紹介など、企業の「人となり」や世界観を見せるのに適しています。 |
フィード動画 | 60秒(最大60秒) | 既存フォロワーとのエンゲージメント強化 | 短めの導入事例紹介、イベントのダイジェスト、ミニ解説動画など。 |
さらに読む:リール動画とストーリーズ動画の違い
自社サイト・ランディングページ
自社サイトやランディングページを訪れるユーザーは、すでに会社や製品・サービスなどに興味を持っている方です。そのため、ある程度長い動画でも見てもらえる傾向にあります。
たとえば、ブランドを理解してもらうための企業紹介動画や顧客インタビューなどの導入事例動画などで主に活用されています。
ただし、展開箇所が少なく、ただ長いだけの動画では、ユーザーはWebページから離脱しかねません。 Webサイトの最終目的であるコンバージョンに寄与しないような本末転倒なことが起こらないようにしましょう。
そのためには、動画は長くても3分ぐらいに編集し、問い合わせや資料請求へのアクションを促すような動画を意識することが重要です。
動画広告
テレビCMやWeb広告など様々な媒体で広告配信することが可能ですが、それぞれの広告媒体で動画の長さは決まってます。
テレビCMであれば、15秒、30秒、60秒などが一般的です。Web広告では、6秒から数分以上まで、目的や媒体によって様々な長さを選ぶことができます。
さらに読む:動画広告市場は今後どうなる?
5.【動画ジャンル別】動画制作の目的から長さを決める

続いては、動画のジャンルから最適な長さを見てみましょう。
企業が動画を作成する際に、ブランディングを目的に動画を作成するのか、採用活動のために動画を作成するのかなど、それぞれ動画を作る目的を決めているはずです。
その目的から逆算すると、1時間を超える長さであったり、または数十秒の長さで良かったり、動画ジャンルによって大きく異なってきます。
動画ジャンル | 最適な長さの目安 | 主な目的 | 内容 |
---|---|---|---|
サービス紹介動画 | 60〜120秒 | 課題・解決策・利点の提示 | アニメーションなどを活用し、複雑な内容を直感的に分かりやすく伝える。 |
お客様導入事例動画 | 2〜5分 | 第三者からの信頼性獲得 | お客様の「生の声」で導入前の課題と導入後の成果を語ってもらう。ストーリー性が重要。 |
ウェビナー・セミナー動画 | 30〜60分 | 見込み客の獲得・育成 | 参加して良かったと思える有益な情報を提供。質疑応答の時間も設ける。アーカイブ配信も有効。 |
採用動画 | 1〜3分 | 企業文化やビジョンの伝達 | 働く社員の姿やオフィスの雰囲気を通して、企業の魅力を伝える。共感を呼ぶことが目的。 |
企業紹介動画 | 1分~3分 | 採用、営業、IRなどでの自社紹介・ブランディング | 誰に(学生、顧客、投資家など)何を伝えたいかを明確にすることが重要です。目的によって最適な長さは異なります。 |
ブランディング動画 | 45秒~90秒 | 商品や企業の認知度・好感度向上 | 機能説明よりも、ストーリーや世界観で視聴者の感情に訴えかけることが目的です。インパクトを重視し、比較的短くまとめます。 |
マニュアル・ハウツー動画 | 2分~10分 | 商品・サービスの使い方説明、顧客満足度の向上 | 内容の複雑さに応じて長さを調整します。1つの動画で完結させず、機能ごとに短い動画を複数作成するのも効果的です。 |
研修・教育動画 | 5分~15分 | 従業員への知識・スキルの伝達、理念浸透 | 長時間になりがちな内容は、集中力が続くようにテーマごとに短く分割することが推奨されます。分かりやすい構成が非常に重要です。 |
まとめ:適切な動画の長さは、目的やターゲット、プラットフォームで決まる!
どのぐらいの動画の長さがユーザーに見てもらえるのかで迷っている方には、本記事を参考にすれば、動画の長さを決められるのでは無いでしょうか。
購買プロセス別、媒体別、動画ジャンル別から、短尺動画と長尺動画の比較など、動画の長さについて網羅的に解説いたしました。
適切な動画の長さは、動画がどのような目的で作られ、誰に届けたいのか、どこに配信するのかで変わってくるというのが結論となります。
この目的、ターゲット、プラットフォームを決めるということは、動画制作における『設計図』を描く、最も重要な工程と言えます。
動画制作を行う際に、最初に動画の長さありきで考えるのではなく、まずは動画をつくるための「戦略」を決めることが大事となります。その戦略さえ決まってしまえば、自ずと最適な動画の長さが見えてくるでしょう。
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