
最近、TikTokやYouTubeショート、Instagramリールなどのプラットフォームで、縦型・短尺の連続ドラマが爆発的な人気を集めています。
いまやこういった「ショートドラマ」は単なるエンターテインメントを超え、企業PRやブランディングにも活用されて、大きな成果を上げるケースも増えています。現代における強力なWebマーケティング手法のひとつとして、確立されつつあると言えるでしょう。
しかし、「流行っているのは知っているが、自社でどう活かせば良いのか」「費用はどの程度かかるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ショートドラマがなぜここまでの人気を獲得したのかを、企業PRの観点から紐解きながら、実際の活用事例や費用相場、今後の展望まで徹底的に解説します。
新しいWebマーケティング手法を模索している企業担当者様はもちろん、SNSを駆使して若年層にアピールしたいと考えている方にとっても、大きなヒントになるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
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目次
1.なぜ今「ショートドラマ」が人気なのか?

「ショートドラマ(短尺ドラマ)」とは、一般的には1話あたり数十秒〜数分で完結、もしくは連続する形式の縦型の動画コンテンツを指します。
ではなぜ、ショートドラマがこれほどまでに爆発的な人気を獲得しているのでしょうか。まずは成功するPR戦略への第一歩として、その背景について探ってみましょう。
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主流となった「タイパ重視」の視聴スタイル
現代人は膨大な情報に囲まれて生活しており、様々なコンテンツがあふれかえる世の中では、可処分時間の奪い合いはこれまで以上に激しくなっています。
そんな中で、Z世代を中心に広まった「タイパ(タイムパフォーマンス)」という価値観が、今日では世代を超えて浸透しています。「限られた短い時間の中で最大限に満足感を得られるコンテンツ」が、優先して選択されるようになってきたのです。
例えば通常のドラマや映画を鑑賞するには、まとまった時間を確保する必要があります。最近ではタイパを優先する若い世代を中心に、「1分程度で完結するコンテンツ」や「長尺の動画を短くまとめたダイジェスト動画」を見れば満足といった風潮も出てきました。
そこで効果を発揮するのが、ショートドラマという形式です。移動中・休憩中などの「スキマ時間」にぴったり収まります。「この程度の時間なら見てもいいかな」「移動の空き時間にサクッと見よう」と思わせる手軽さが、多くの視聴者のニーズにハマったと言えるでしょう。
広告と意識させない「ストーリーテリング」
前述のように、タイパ重視の視聴行動が一般化した今、「広告としての動画はそもそも視聴者に見てもらえない」という前提で考える必要が出てきました。
もともと広告は「企業からの一方的なメッセージ」と受け取られ、視聴者に敬遠されがちでした。そこで重要になるのは、視聴者が「広告を見ている」という意識を持たずに再生を続けてくれる構造です。
ショートドラマは物語として始まるため、自然なかたちで視聴を続けてもらえます。まずストーリーに引き込むことで、伝えたい情報まで抵抗なく到達してもらえるのです。
また、連続ドラマの形式で投稿を継続することで、視聴者のエンゲージメントが高まり、長期的な顧客ロイヤルティの強化も期待できます。
こうした「広告ではなく物語として見てもらえる仕組み」こそが、ショートドラマが企業PRで高く評価されている理由と言えるでしょう。
SNSアルゴリズムと相性抜群の親和性
TikTokやYouTubeショート、Instagramリールといった縦型動画のプラットフォームのアルゴリズムで重視されているのは、ユーザーの「視聴維持率」や「エンゲージメント(いいね・コメント・シェア)」です。
ストーリー性のあるショートドラマの場合、「続きが気になる」ことで視聴維持率が、「感情が動かされる」ことでエンゲージメントが高まります。
それによりコメントや考察の投稿が増え、アルゴリズムに「良質なコンテンツ」として評価されやすくなるのです。
そのため、フォロワーがゼロの状態からでも一気に拡散し、大きな認知を獲得できる可能性があります。
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UGC(ユーザー生成コンテンツ)としての拡散力
優れたショートドラマは、視聴者自身が「考察」や「感想」といった形で二次創作コンテンツ(UGC)を生み出すきっかけにもなります。
企業が投稿したコンテンツが、視聴者の手によって広がっていくUGCの連鎖こそが、強力な拡散力の源であり、ショートドラマが持つ最大の強みのひとつと言えるでしょう。
2.企業PRにおけるショートドラマ活用の絶大なメリット

ショートドラマがなぜ多くのユーザーに受け入れられているのか、その構造的な理由については、ご理解いただけたかと思います。ここでは企業PRの観点から、「なぜショートドラマを活用すべきなのか」、そのメリットを3つご紹介していきましょう。
「広告っぽさ」を払拭したナチュラルなPRが可能
ショートドラマの最大の魅力は、「広告に見えない広告」を作れる点にあります。現代の消費者は広告を避ける傾向が非常に強く、特にSNSでは「広告臭」をわずかでも感じるとすぐに離脱してしまいがちです。
しかしショートドラマであれば、「エンタメ」の衣をまとうことで、視聴者はそれを「広告」ではなく「作品」として鑑賞しやすくなります。
そこへサービスや製品、企業理念などが自然な形で登場すると、視聴者はそれを「物語の重要な要素」として受け入れます。
ドラマの登場人物に共感したり意外な展開に驚いたりと、物語に没入していくうちに、ストーリーの背景にある企業や商品への理解や好感が、「広告」を意識することなく形成されていくのです。
広告としての抵抗感が薄れ、物語を通じて伝えたい内容が届く…そんな、押しつけではない「共感による理解」が生まれるのが、ショートドラマの大きな魅力だと言えるでしょう。
新たな企業ブランドの構築
ショートドラマは、企業の「人格(ブランドパーソナリティ)」を伝える最適な手法です。
・面白くて革新的な企業
・社会課題に真摯に取り組む企業
・社員を大切にする温かい企業
例えば上記のような企業としての「見えない価値」は、文字で説明するよりも、ドラマで可視化したほうが圧倒的に伝わりやすいと言えるでしょう。
ストーリーへの共感は、ドラマを通じてそのまま企業の姿勢や理念への共感へと変わり、「ファン」つまり「顧客」の獲得に繋がっていきます。
そうして共感してくれた顧客は単なる消費者にとどまらず、企業の製品やブランドを応援し、他者にも推薦してくれる強力な「サポーター」になるのです。
さらに読む:ブランディング動画を制作すべき理由とは?
少ない初期投資で導入可能
「ドラマ制作」と聞くと、テレビドラマのように莫大なコストがかかるのでは?と、二の足を踏む人も多いかもしれません。 もちろん、求めるクオリティや話数によっては、制作費が高額になるケースもあり得ます。
しかし特に縦型のショートドラマの場合は、少人数のクルーによる制作やスマートフォンでの撮影でも、以下のような工夫次第で、十分に高品質な映像を実現することが可能です。
・俳優ではなく、自社の社員が出演する
・ロケは自社内で行う
・脚本の力で勝負する
まずは小さく始めて、視聴者の反応を見ながらスケールを調整できる柔軟さも、ショートドラマの大きなメリットだと言えるでしょう。
3.【企業PR向け】ショートドラマ活用事例4選
ショートドラマがエンタメとして人気を集めている一方で、それを企業PRにどう落とし込むべきか、まだ具体的なイメージが湧いてこないという方も多いかもしれません。
ここでは、実際にショートドラマをPRに取り入れている例を4つ紹介していきます。どの事例も、企業が抱える課題や届けたいメッセージを「物語」という形で視聴者に自然に伝えている点が特徴です。
株式会社JTB『旅行計画を立てるのって楽しい!』
旅行業を営むJTBが制作した、卒業旅行をテーマとしたショートドラマです。討論部の3人による「そもそも卒業旅行には行くべきなのか?」という議論からスタートし、実際の旅先でのハプニング、そして旅が終わってからの出来事までを丁寧に描写。「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という旅行の全プロセスをストーリーに落とし込んでいます。
旅行というと、「旅ナカ(旅行中)」の様子にフォーカスしがちですが、このショートドラマでは「旅マエ(計画中)」の楽しさから「旅アト(帰宅後)」の予想外の展開までを見せることで、ストーリー全体に深みが増す構成になっています。
三井ホーム株式会社 『小鳥遊親子は、選びたい。』
大手ハウスメーカー・三井ホームのオリジナルショートドラマです。全8話のシリーズでは、ハウスメーカーの選定から完成まで、家づくりの過程を「小鳥遊(たかなし)家」の家族を通して描写します。
家族一人ひとりが持つこだわりや悩みを、同社の規格住宅「MITSUI HOME SELECT」なら解決できることを伝えるコンテンツとなっているのが特徴です。最終的に、三井ホームの商品コンセプトがドラマの中で自然に理解できる構成になっています。
株式会社NTTドコモ『終わりと結び』
「等身大の青春」をテーマに、学生ドラマを展開しているNTTドコモのTikTokアカウントでは、全2話からなるショートドラマを多く投稿しています。
登場人物が着ているのは、「ドコモレッド」をさりげなく連想させる色味の制服。さらにストーリーの中で、「学生にとって欠かせない存在」としてのスマホを必ず登場させるなど、ブランド要素を巧みに散りばめた演出が光ります。
ヤマダ電機『ポケベルって何、おいしいの?』
家電ショップ大手のヤマダ電機のショートドラマ。30年前のポケベルを突然「返品したい」と持ち込む女性と、困惑する店員とのやり取りがコミカルに描かれています。
女性が次々とレトロなガジェットを取り出すたびに、店員の反応が困惑と興奮の間を行き来し、ノスタルジーを刺激する意外性のある展開で視聴者を引き込みます。
広告色を出さずにブランドの親しみやすさを自然に伝える、ショートドラマならではの魅力が詰まった作品です。
4.ショートドラマ制作の費用感

企業担当者にとって、ショートドラマの導入を検討する際に最も気になるのが、制作費ではないでしょうか。費用対効果を考える上でも、あらかじめ相場感を掴んでおくことは重要です。
ショートドラマは「短尺だから安い」と思われがちですが、企業PRとしての効果を得るためには、ある程度のクオリティは確保したいもの。ここでは、実際の制作で採用されることの多い3つのパターン別に、費用相場の目安についてご案内します。
【パターンA】30万〜80万円/本
もっとも導入しやすい価格帯です。予算を抑えながら、ショートドラマづくりを試してみたい場合におすすめです。
| 企画・ストーリー | シンプルで単純なストーリーで、演出も最小限に抑えたパターン。様々な制約はあるものの、視聴者の心を動かす「軸」をうまく設定できれば、十分にドラマとして成り立ちます。 |
| キャスト | 自社スタッフを登場させたり、無名の役者を1人だけ起用したりすることで登場人物を絞り、コストカットを実現します。 |
| 撮影 | 撮影はスマホやミニマルな機材を活用し、自社施設で「1日・1ロケーション」の小規模体制で実施。最低限の限られた機材でも、工夫次第で印象的な映像づくりは可能です。 |
【パターンB】100万〜250万円/本
本格的なPR効果を狙う場合は、この価格帯で検討してみましょう。脚本・映像ともにクオリティを求めるショートドラマに向いています。
| 企画・ストーリー | プロの脚本家によるシナリオで、クオリティの高いドラマを制作します。 |
| キャスト | 認知度のあるインフルエンサーやプロの俳優を起用することで、拡散力が期待できます。複数の人物が登場するため、厚みのあるストーリーや世界観の構築が容易です。 |
| 撮影 | 小〜中規模の撮影チームで、複数のロケ地で撮影します。調整や段取りが必要になる分、広告映像としてクオリティの高い仕上がりが期待できます。 |
【パターンC】300万円〜/本
上質な「映像作品」として長く運用したい場合や、ブランドキャンペーンの軸として取り入れる場合におすすめです。実際の費用は、内容やクオリティによって大きく変わります。
| 企画・ストーリー | 著名な監督や脚本家をアサインし、作品性の高いショートドラマを制作。SNSだけでなく、テレビやメディアへの出演など、二次的な広がりも期待できます。 |
| キャスト | 人気タレントや俳優を起用することで、広範囲へのリーチが狙えます。ブランドの社会的イメージの向上に繋がるのも魅力です。 |
| 撮影 | 映画やテレビドラマと同等のカメラや音響、照明などの機材を使い、大規模チームで撮影に臨みます。セット設営や遠方へのロケなどにも柔軟な対応が可能です。 |
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5.ショートドラマの次に来るもの

ショートドラマの人気はますます高まっており、国内外で参入する企業やクリエイターは急増しています。今後もこの流れは続いていくでしょう。
もはや「ショートドラマを活用したPR」は一般的な手法になりつつあり、先進的な企業では「次の一手」を模索し始めています。
そこでここでは、ショートドラマを応用した次世代の動画マーケティング戦略を紹介します。
インタラクティブ・ショートドラマ
視聴者の選択によって物語の展開や結末が変わる、「インタラクティブ(双方向)性」を盛り込む手法です。既に一部の企業では、インタラクティブなPR動画の活用が進んでいます。
例えば、ドラマの途中で視聴者に選択肢を提示して選んでもらい、それぞれ選択に応じた商品を提示するなど、双方向性を活かしたPRが実現します。
ショートドラマとの相性も非常に良く、ストーリーの中で選択を重ねていくうちに、視聴者はより深い没入感を味わえます。将来的には、この仕組みを利用したショートドラマが主流となるかもしれません。
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AIによるパーソナライズド・ドラマ
生成AIの進化によって、視聴者一人ひとりに最適化された動画を「自動生成」する未来が見えてきました。
視聴者の年齢や興味・関心、行動データ、過去の視聴傾向といった幅広いセグメント情報に基づき、AIがリアルタイムで「その人に最も刺さる」シナリオやキャスティングに変化させていく。
こういったAIによる自動編集・自動キャスティングの研究は、既に海外の広告業界ではかなり進んでおり、視聴者ごとに異なるストーリーが配信される世界も近いと言われています。
もしもパーソナライズド・ドラマが一般化すれば、企業はより高い精度でターゲットにアプローチできるようになり、PR効果も大幅に向上するでしょう。
まとめ:ショートドラマは「共感」を軸にした最強のPRツール
ここまで、ショートドラマの人気の背景から具体的な企業PRでの活用法、さらには実際の事例や費用相場、未来の動画マーケティングまで幅広く解説してまいりました。
ショートドラマは、単に今風の「短い時間で視聴できるドラマ」というだけではありません。企業が伝えたいブランドメッセージを、視聴者が「楽しみながら共感できるストーリー」として届ける強力な手法です。
これまでの一方的に発信される広告とは一線を画し、広告感のない自然な訴求を実現することで、ブランドへの好感度の形成を促します。
しかし、その効果を最大化するためには、「誰に」「どんな感情を抱いてもらい」「どんな行動をしてほしいのか」という戦略が欠かせません。この戦略的設計があってこそ、ショートドラマは企業の強力な資産になっていくのです。
ぜひ本記事を参考に、企業と顧客の接点としてのショートドラマを活用してみてはいかがでしょうか。
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